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登山紀行「ブナの森を訪ねて和賀岳、真昼岳に登る」(その1)
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作成日時 : 2008/08/15 12:44
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☆ 登った日 08,07,26〜27(出発は25日)
☆ 登った山 薬師岳、和賀岳、真昼岳
和 賀 岳 登 山 記
この文章は、職場山岳会恒例の夏山山行の紀行である。
08年の夏山として選ばれた山は和賀岳であった。名前も知らない、したがってまったく意識したことのない山であった。ともあれ和賀岳は日本二百名山のひとつであり、秋田県と岩手県の県境稜線に形成する真昼山地の最高峰である。この真昼山地は、奥羽山脈の中にあって例外的に非火山性の山塊である。
早朝4時半すぎには宿舎(千畑温泉サンアール)前の広場に山支度の仲間が集まり、ストレッチ体操をしながら、送迎バスを待つ。宿舎のはす向かいにある小高い丘からヤマユリの濃密な香りが漂ってくる。5時ちょうどに宿舎前を出発。
送迎バスは、狭い山道を何とか通過できる小型のバスで、26名の仲間が乗るとちょうど満席であった。当初計画していたタクシーが手配できず、このマイクロバスになったらしい。地元とのやり取りにリーダーのSさんはずいぶん骨を折ったという。バスが里道から山道に入ると、すぐに未舗装の狭い林道になった。真木渓谷(まぎけいこく)に沿って作られた林道は急カーブの連続で、山際の樹木の枝葉がバスにあたる。
バスは50分ほど走って、登山口の手前で止まった。林道はまだ続いているが、これより奥に入ると、Uターンができなくなるようだ。林道の脇に立派な避難小屋がある。沢水を利用した水洗トイレ付きであるが、配管にトラブルがあるらしく、水が小屋の床にあふれていた。
6時ちょうどに登山開始。林道を10分ほどゆくと、登山口になった。登山口の脇に山裾から水が湧き出ている。甘露水の名がつけられている。
林道から取り付いた登山道は、かなりの急登である。体がまだ完全に目覚めていないこともあって、わずかの登りで息が上がってしまい、先が思いやられる。
幸いこの急登もすぐに緩やかな登りになり、ほっとする。樹林に太い幹のブナが目立つようになる。テラス状の狭い広場があり、ブナ台の地名がついている。名に違わずあたりはブナの林である。ここから緩やかに登ると、登山道は小さな沢を横切っていた。滝倉沢(たっくらさわ)である。
蒸し暑いためか、水の消費が予定より早く、沢水を補充し、ペットボトルを満タンにする。今日は同じルートの往復であるが、これから上には一滴の水もないらしい。したがって、ここに戻るまで今もっている水で間に合わせなければならない。
沢からわずかに急登を登ると滝倉沢避難小屋跡があった。避難小屋の痕跡は何もないが、わずかな草つきの空間があり、二張り程度のテントなら張れそうだ。このあたりにタマガワホトトギスが見られた。斑点がわずらわしいが、黄色の色合いが好ましい。
樹林の中をジグザグに登り詰めてゆくと、前方が明るくなり稜線が近いことを思わせる。
倉方で稜線に突き上げる。風はなく、汗が吹き出る。狭い稜線であるが、登山道の左右に高山の花が姿を見せるようになった。写真を撮りながら進むと、薬師分岐の道標があった。右に下る小さな尾根に山道がつけられている。この尾根は地図を見ると、秋田・岩手の県界をなしている。我々の行く稜線の右側には谷が広くえぐられている。行政区域は老人医療で有名になった岩手県沢内村(現:西和賀町)である。谷を隔てて岩手県の山々の重なりが見える。はるか南の雲の上に山頂の一部が見えたのは鳥海山であったかもしれない。
高原状の笹原を登りつめると薬師岳であった。標高1218メートル、前方に和賀岳が見えるはずであるが、あいにくガスがあり展望は得られなかった。狭い山頂で記念の写真を撮る。薬師岳を北向きに緩やかに下る。広い山稜はお花畑になっている。ニッコウキスゲがところどころに姿をみせているが、登山道から離れているのが多い。写真を撮られるのがいやなのかもしれない。お花畑で写真を撮っていると、我が登山隊は見る見るうちに遠ざかり、追いかけるのに苦労する。予想以上に暑く、ペットボトルの水がどんどん少なくなり、帰りが心配になる。
急坂を登りきると小杉山(1229メートル)であった。山とはいえ、はっきりした突起はない。T字路の分岐点になっており、和賀岳は右に直角に折れる。すぐ目の前にどっしりした大きな山が見える。始めこれが目標の和賀岳かと思い、これなら楽勝と思ったが、和賀岳はこの山の後方に見える山だと分かる。Hさんの「手前のピークは小鷲倉」という声が聞こえる。山ではよくあることで、手近な山が登る目標の山であることはほとんどない。
さて、小杉山の分岐から少し進むと、笹が茂っていて薮こぎを強いられるようになる。時にはササが背丈ほどもあってほとんど道が見えず、手さぐり(否、足さぐり)で歩くが、二三日前に降った雨でぬかるんでおり、時々体重を移した足が滑り、転びそうになる。何となくササやぶからクマがぬっと出てきそうな雰囲気である。薬師平で会った地元の単独行氏は、薮こぎが大変なので途中から引き返したと話していたが、あるいはクマとの遭遇を恐れたのかもしれない。もっとも、我々は遠く関東から出かけてきたのだから、この程度の薮で退散するわけには行かない。小鷲倉は何の特徴もないのっぺりした瘤であるが、薮こぎと暑さに疲れた体は、自然と休息を要求する。
このあたりから登山道の両側にニッコウキスゲが目に付くようになる。今度は手が届くような近いところにも、黄色い花が派手な顔つきで秋波を送ってくる。和賀岳の頂上はすぐ近くだが、写真を撮るために、また足が止まる。珍しくKさんも一眼レフのレンズを花に向けている。
11時45分、和賀岳登頂。山頂は円盤状でずいぶん広く、1等三角点のあるあたりを除くとお花畑になっていた。高さ数十センチほどの小さな祠がある。あいにく夏雲が沸き立ち、北の方角はほとんど展望が利かなかった。それでも、田沢湖が見えているとKnさんが教えてくれた。金色の辰子姫は見えなかったが、丸い湖水の輪郭はなんとか捉えられた。視界がよければ、早池峰山、岩手山、八甲田山、岩木山、秋田駒、鳥海山、月山などが見えるらしい。
山頂滞在30分で記念写真を撮り、昼食を済ませ、あわただしく下山する。往路を帰るため特記するほどのことはないが、薬師岳から小鷲倉、無名峰、和賀岳が東北の山らしいゆったりした山容で並んでいるのが見られた。この展望は登りの時には雲にさえぎられて見られなかったものである。夏の暑さに耐えながらひたすら歩く。水が残り少なくなり、口に含む程度しか飲めないのがつらい。このままさらに二時間も歩けば、熱中症になりかねない。
水を飲みつくしてやっと沢にたどり着いた。沢水を飲んで人心地がつく。ここからバスの発車時間まであまり余裕が無いということで、急ぎ足で下山した。駐車場着16時20分。1500メートルにも満たない山ながら、10時間を越える所要時間に山の深さがうかがえる。
ニッコウキスゲやクルマユリ、タマガワホトトギスその他数多くの花と一期一会の出会いを楽しむことができた。東北の山とはいえ、炎天下の山歩きはかなり厳しいものがあったが、全員登頂できたことを喜びたい。(080811)
(写真上:左から小鷲倉、無名峰、和賀岳)(No./080815/字数2949)
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